本研究では移入植物の地域生態系への影響を明らかにするため、餌資源を花粉および花蜜に依存するハナバチ類に注目し、これらが巣に貯蔵する「花粉団子」を分析することによって移入植物への「依存度」を定量化することを目的としている。調査は沖縄県・西表島で行った。本年度は1.移入植物の現況調査、2.実験用野生ハナバチ(オキナワツヤハナバチ)の増殖を試みた。以下に実績の概要を示す。 1.移入植物の現況調査:2004年6月30日〜7月7日にかけて調査地である西表島において調査区の設定と現況調査を行った。本島を代表する移入植物としてアワユキセンダングサを選定し、本種の相対的な分布量を「山地」、「耕作地・人家周辺」および「海浜」別に計9カ所において調査した。調査場所による局地的な影響があるものの、一般的な傾向として「耕作地・人家周辺」>「山地」>「海浜」の順に相対量は多かった。一方、営巣資材となるススキやクサトベラを採集した結果、オキナワツヤハナバチの営巣率は「海浜」>「耕作地・人家周辺」>「山地」の順で高い傾向がみられた。 2.実験用野生ハナバチ(オキナワツヤハナバチ)の増殖:2004年6月30日〜7月7日および2005年1月30日〜2月2日に西表島の島内15カ所においてオキナワツヤハナバチの巣および訪花中のメス成虫を採集し、これらを島根大学構内のハナバチ飼養ケージに放飼して増殖を試みた。営巣基となるススキ・モミジイチゴの枯茎および花資源植物を配置し飼養した結果、次年度の実験用個体群として約60巣を確保することができた。
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