本研究では移入植物の地域生態系への影響を明らかにするため、餌資源を花粉および花蜜に依存するハナバチ類に注目し、これらが巣に貯蔵する「花粉団子」に含まれる花粉粒数の比率から移入植物への「依存度」を定量化することを目的としている。調査は沖縄県・西表島で行った。以下に実績の概要を示す。1.分析用の花粉団子を得るため、前年度に島根大学構内において増殖した西表島産オキナワツヤハナバチを巣ごと同島へ持ち込み、島内5ヵ所に各50巣ずつ配置した。また花粉団子の花粉粒を同定するために必要な花粉プレパラートを作製するため、主要開花植物から花粉粒を採集した(2005年5月19日〜23日実施)。2.5月に設置した巣を回収し、島根大学に持ち帰って解体した。営巣成功率は低く(13.2%)、花粉団子が得られたのは回収した33巣中、わずか3巣に過ぎなかった。花粉団子を構成する花粉粒のうち平均62.5%がタチアワユキセンダングサによるものであった。(6月20日〜23日実施)。3.追加調査のため、島内5ヶ所においてオキナワツヤハナバチの巣材であるススキ、モンパノキ、クサトベラなどの枯茎を切断、営巣可能な状態にしてトラップ巣とした(10月22日〜25日実施)。4.これらの一部を回収し、ツヤハナバチの営巣状態を確認した。営巣成功率が比較的良好な地点が発見されたため、ここを拠点として次年度以降に調査を再開することとした(2006年1月〜2月実施)。 島内への外来生物持ち込みを避けるため、在来のハナバチを利用したモニタリングを目指した。実験の前段階である在来種の増殖については一定の成果を収めたが、本来の目的であった花粉団子分析に必要なサンプルを効率的に収集するには、トラップ巣の設置数や回収時期を倍増させるなど、より大規模な調査が必要であることが示唆された。
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