研究概要 |
平成17年度は、16年度の研究によってヒトの健康に安全な稀少元素を選択でき、また導入に使用した数種の元素は培地の濃度に比例して直線的に導入されることが明らかとなった、これらの元素を複数種組み合わせた培地の中で、植物を栽培し、複数種のマーカー元素がそれぞれ培地の濃度に比例して吸収されるかどうか、さらに吸収されたマーカー元素の種類と濃度に応じて野菜がはっきりと区別可能かどうかを検討した。 方法:葉菜類は、サラダナとリーフレタスを使用した。処理区としてBaは0.50,5.00ppm、Srは5.00,10.OppmおよびMoは0.50,5.00ppmの各2段階の濃度をそれぞれ組み合わせ、合計8処理区(2×2×2)を設けた。培養液は、園試処方1/2単位の濃度組成の培養液を用い、この培養液に上述の3種のマーカー元素を加え、葉菜類を約30日間栽培した。 結果:サラダナとリーフレタスとも正常に生育し、生体重および外観について処理区間で差は認められなかった。Ba5.00ppmに設定した処理区の培地中の実存濃度は、1.30ppm程度に低下した。Baが培地中の硫酸イオンと反応して難溶性の硫酸Baを形成し、多くが沈殿したものと考えられた。Ba0.50ppm処理や他の元素の培養液実存濃度は設定値とほとんど変わらなかった。を植物体中の各元素濃度は培地中の当該元素の実存濃度と密接な正の相関を示した。このことは、3種の元素が植物の吸収に対してお互いに干渉しないことを示している。植物に吸収された3種の元素濃度について、正準判別検定を行ったところ、両葉菜類ともはっきりと8グループに分かれた。また、植物体に吸収された量は、3種の元素とも安全な濃度であり、この葉菜類500gに含まれる元素量は、全元素とも1日摂取量よりも低い。以上から、植物体へ安全な濃度範囲でのマーカー元素の導入により、産地判別のため植物体へ直接ラベルすることが可能となった。
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