研究概要 |
本研究では,高温環境に生息する微生物のATP合成酵素の機能解明を目指す。高温微生物のATP合成酵素は,熱やその他過酷な条件にも耐えうる可能性がある。従って,本研究から耐熱性ATP合成酵素のローターリーモーターとしての特性を工業利用するナノテクノロジーの基盤を提供する目的で研究を開始した。本年度の研究実行により,以下の知見を得た。 1.ATP合成酵素の8種類のサブユニットうち,分子モーターとして機能するためのコアとなるサブユニット,α,β,およびγの全塩基配列を決定し,クローン化に成功した。 2.本菌の菌体抽出液を用いて,ATP合成の逆反応であるATP分解活性を追った。大腸菌の菌体抽出液を実験対照としたところ,本菌由来の活性が極めて熱に安定なことを明らかにした。 本年度の研究で,(1)対象とする高温微生物のATP合成酵素の活性が熱に対して安定であること,さらに(2)ATP合成酵素遺伝子のクローン化が順調に進んでいること,といった成果を上げた。 今後の研究方針は,計画当初と変更はなく,これまでに得られた成果を踏まえ,ATP合成酵素の一分子観察を行っていく。バルクの酵素活性では熱に安定であることが分かっているので,そういった性質が一分子で観察したときにどういったモーター特性と対応するのかを調べる予定である。
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