研究概要 |
シダ植物に普遍的なホパン骨格のトリテルペンを多暈に生産するホウライシダ(Adiantum capillus-veneris)およびアスピジン等特異なフロログルシン誘導体を生産するオシダ(Dryopteris crassirhizoma)植物全草より、常法に従いRNAを抽出し、逆転写によりcDNAを調製した。バクテリア4種からクローニングされているホパン合成酵素間で保存されている配列を基に縮重入りプライマーを設計し、上記cDNAを鋳型としたPCRにより標的酵素断片の増幅を行った。同様に、高等植物およびバクテリアからクローニングされているポリケタイド合成酵素間で保存されている配列を基に縮重入りプライマーを設計し、上記cDNAを鋳型としたPCRにより標的酵素断片の増幅を行った。得られた断片の塩基配列を解析したところ、ホウライシダから、1種のホパン合成酵素と推定されるクローン(AsSC1)を、オシダから3種のカルコン合成酵素と推定されるクローン(DcPKS1,2,3)を得た。得られた各クローンの配列を基に3'-および5'-RACE法により全長の配列を取得した。 ホウライシダから得られたAcSC1はバクテリア(Aliciclobacillus acidocaldarius)由来のホパン合成酵素と38%のアミノ酸配列の相同性を持っていた。また、オシダから得られたDcPKS1はアルファルファ由来のカルコン合成酵素と70%の相同性を持っていた。これらの相同性から、各クローンは標的とする酵素遺伝子であると推定した。次年度は、これら得られた遺伝子を酵母、あるいは、大腸菌の発現ベクターに組み込み、誘導培養した各菌体より組換え酵素タンパクを抽出・精製しin vitroの酵素反応を行い、酵素機能の同定を行う予定である。
|