研究概要 |
クロプトシンはヒドロピロロインドールカルボン酸、D-バリン、ピペラジン酸、O-メチル-L-セリン、D-スレオニンからなる環状ヘキサペプチドの二量体であり、主に脾臓、腺の癌細胞に対し極めて強力なアポトーシス誘導活性を示す。また、この化合物について、メチシリン耐性グラム陽性菌に対する強力な抗菌作用も見出されている。このように、クロプトシンは医薬開発リードとして非常に注目を集めている化合物であり、その全合成をとおして、誘導体合成に有用な方法論を確立することは非常に意義深い。そこで、クロプトシンの全合成に向けて、畑山と石原はヒドロピロロインドールカルボン酸コア部とペンタペプチド部の合成をそれぞれ検討した。畑山は、まず、2,4-ジヒドロキシアセトフェノンのメシラートおよびトリフラートの芳香族置換反応によるアジド化を試みたが、目的化合物は得られなかった。しかし、2-アミノアセトフェノン誘導体をジアゾ化後、アジ化ナトリウムを作用させると速やかにアジド置換が進行し、2-アジドアセトフェノン誘導体が定量的に得られことを見いだした。現在、計画に従い、トリフラート化に続くアラニン有機亜鉛化合物とのカップリングを検討中である。また、別ルートとして薗頭カップリングに基づく芳香族置換反応も検討した。その結果、THF-MeCN混合溶媒中Pd(PPh_3)_2Cl_2/CUI/Et_3N/Bu_4NIの反応系でほぼ定量的にプロパルギルアルコールを導入できることを見いだした。現在、プロパルギルアルコール部の還元的ヨウ素化に続くアラニン有機亜鉛化合物とのカップリングを検討中である。一方、分担者の石原はD-スレオニン、O-メチル-L-セリン、R-ピペラジン酸、およびD-バリンとS-ピペラジン酸から各種構成アミノ酸の合成を進めている。
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