研究概要 |
昨年までに、前例のないアレニルセレノニウム塩の合成単離に成功し、それらと活性メチレンカルバニオンとの反応からマイケル付加-分子内環化連続反応によりフラン及びジヒドロフランが生成することを報告した。今回、アレニルセレノニウム塩とエノラートアニオンとの反応を検討した。THF-DMF(1:1)混合溶媒中-78℃でアセトフェノンにLHMDSを加えリチウムエノラートとし、ジメチル(3-フェニルプロパ-1,2-ジエニル)セレノニウムトリフラートと反応させたところ、(E)-及び(Z)-2-メチル-2-フェニル-3-(フェニルエチニル)オキシランがそれぞれ32%で得られた。発生したエノラートアニオンは比較的強い塩基性を示すため、ジメチル(3-フェニルプロパ-1,2-ジエニル)セレノニウム塩のγ位水素を脱プロトン化し、アセトフェノンとプロパルギルセレノニウムイリドを生じる。続いてイリドカルバニオンはアセトフェノンのカルボニル炭素を求核攻撃しベタインを形成後、Corey型の分子内環化反応によりオキシラン誘導体を生成する。中間体となるプロパルギルセレノニウムイリドの存在を明らかにするため、その前駆体であるジメチル(3-フェニルプロピ-2-ニル)セレノニウムトリフラートを合成した。これを塩基存在下アセトフェノンと反応させ、同様のオキシラン体を得たことにより上記の反応機構で反応が進行していることを証明した。一方、(1-ベンジルプロパ-1,2-ジエニル)セレノニウム塩とアセトフェノンより誘導されるエノラートとの反応は、メチル(5-フェニルペンチ-3-ニル)セレニドを34%で与えた。この反応はセレン原子上のメチル基の脱プロトン化によりイリドが生成し、続く分子内SN2'反応により進行した。 以上アレン骨格上の置換パターンの違いにより同じ求核剤との反応でも全く異なる反応機構で進行することを見出した。
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