研究課題/領域番号 |
16659009
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
浅川 義範 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (50033874)
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研究分担者 |
橋本 敏弘 徳島文理大学, 薬学部, 助教授 (10075955)
豊田 正夫 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (50122586)
西木 まゆみ 徳島文理大学, 薬学部, 助手 (40140610)
長島 史裕 徳島文理大学, 薬学部, 助手 (60228012)
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キーワード | カメムシ類 / アオカメムシ / ツヤカメムシ / 不飽和脂肪酸 / 不飽和脂肪酸アルデヒド / シツフ塩基 / 濃褐色色素形成 / 裁判化学 |
研究概要 |
カメムシ類10〜30秒軽く握ると手や指の皮膚を赤褐色に染め、石鹸で洗浄しても2週間は除去できない。この現象を有機化学的に解明するために各種カメムシ類を採集し、カメムシ臭気の捕集、虫体のエーテル抽出、次いでカラムクロマトグラフィで精製・構造解明、得られた化合物の人皮膚に対する色素形成について追跡した。アオカメムシ、チャバネアオカメムシ、ホウズキカメムシ、ツヤカメムシを徳島市内で採集した。生きたカメムシ類は短時間で皮膚色素形成するが死んだカメムシ類は全く色素形成をしないことから、これらの臭気が色素形成をすると考えられた。そのためまず試験管に各種カメムシを入れ臭気を保取し、GC/MSで分析した。これらには共通して既知cis-およびtrans-2-ヘキセナールなどの同族体を含むことが判明し、また揮発成分の中には、n-トリカデンを多量に含有する。色素形成はこれらの不飽和アルデヒド類と人皮膚のタンパク質と結合した色素と推定されるため、リジン、アルギニン、ヒスチジンなど各種アミノ酸との反応を検討した。得られたシツフ塩基の色素は多種の混合物で暗緑色であり、皮膚に見られる色素の質とは全く異なる。そこで直接cis-およびtrans-2-不飽和脂肪酸アルデヒド類を購入し、それらを直接ビニール袋に入れ、両手を突っ込み外からヒーターで加熱して、試薬を揮発させ15分間の変化を待った。予想に反して皮膚には全く反応が進行しなかった。このことから皮膚色素形成にはカメムシ類から放出される主成分の不飽和アルデヒド類とさらに微量の第2、第3物質の影響があると考えられた。このことをさらに実証するために水銀灯に集まるアオカメムシを2ヶ月間、毎日採集し、約3kgを得た。これをエーテルで抽出し、大多量の既知不飽和脂肪酸、ステロール、油脂、ワックス、n-アルカンなどともに未知化合物含有画分を得た。現在この中から微量揮発成分を精密質量分析によりそれらの構造を決定するとともに、シッフ塩基混合物の精製をおこない、構造を決定中である。本色素形成は当初思ったよりその生成機構は複雑である。しかし、本色素生成は極めて短時間の反応で現れた色は鮮やかであり、反応経路が解明できれば各種防犯スプレー開発および裁判科学的発展が期待され、引き続き精力的に研究を続行している。
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