研究概要 |
Amyloid β peptide (Aβ)の前駆体タンパク質(amyloid precursor protein, APP)が,研究代表者らが見出したERAD関連ユビキチンリガーゼHRD1によって分解調節を受けることを見出した.さらに,神経細胞に対して毒性があるAβペプチド(1-40,1-42)はともにHRD1遺伝子の高発現細胞株において,その産生量が低下することを示した. 脳虚血モデル,低酸素虚血モデルを用いて,ケミカルシャペロンとして知られている4-フェニル酪酸を投与した時の神経細胞死への作用を検討した結果,4-フェニル酪酸に脳虚血障害改善作用が認められた.さらに4-フェニル酪酸の作用機序を明らかにする目的で,小胞体ストレス反応におけるGRP78誘導,転写因子CHOPの誘導,小胞体ストレスセンサーIRE1の下流で惹起されるXBP-1のスプライシング,eIF2αリン酸化に及ぼす4-フェニル酪酸の作用を検討した結果,4-フェニル酪酸はこれらの小胞体ストレス応答を軽減した. 脳変性疾患に伴って起こる細胞死惹起機構を明らかにするために細胞死実行因子であるカスパーゼをbaitにした酵母2-ハイブリッド法を行い,glucocorticoid modulatory element-binding protein 1 (GMEB)を単離した.GMEB1は上流カスパーゼであるカスパーゼ-2,8,9の活性化・多量化に必至なプロドメインに結合することで,カスパーゼの活性化を抑制し,アポトーシスを制御していることが分かった.動物個体におけるGMEB1の役割を明らかにするために,神経特異的にGMEB1を発現するトランスジェニックマウスを作出した.本TGマウスに局所脳虚血を施したところ,脳浮腫および脳梗塞層形成が著明に抑制された.したがって,GMEB1は生体内カスパーゼ制御因子として作用していることが示唆された.
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