前年度の研究において、エストロゲン受容体β遺伝子のCAリピート多型と更年期障害の症状との間に関連性があることを明らかにした。そこで、本年度はCAリピート多型と薬剤使用動向及び薬物効果との相関を検討した。処方薬剤とCAリピート多型との相関については、千葉県立東金病院で更年期障害の薬物療法が行われた患者63名に対して3ヶ月以上処方された薬剤195件を対象として解析を行った。その結果、漢方製剤単独療法と他の薬剤との併用療法の割合は、SS genotypeが2.14、SL genotypeが1.43、LL genotypeが0.86とSS genotypeはLL genotypeの2.5倍も併用している者が多かった。また、更年期障害治療の3大漢方処方である加味逍遥散、桂枝茯苓丸および当帰芍薬散を合わせた処方率はSS genotypeの者が72.7%、SL genotypeでは47.1%、LL genotypeでは38.5%とSS genotypeがLL genotypeに比べ処方率が有意に高いという結果が得られた。さらに、桂枝茯苓丸の処方率はSSの者は31.8%であるのに対し、他のgenotypeの者は10.0%とSS genotypeが有意に高かった。この結果、CAリピート多型と更年期障害治療の3大漢方処方との間には何らかの相関があり、SS genotypeの者は、これらの漢方製剤、特にhot flashの症状が強い場合には治療薬の1つとして桂枝茯苓丸を選択することに意義があると示唆された。この結果は、Jpn.J.Pharm.Health.Care Sci.に投稿し掲載された。 本研究により、更年期障害における薬物療法のエビデンスを遺伝子多型解析という新たな観点から確立することができた。
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