我々は、平成12年度から5年間の予定で文科省科学技術振興調整費『依存性薬物により誘発される精神障害の機構の解明の研究』を得て、薬物依存の研究者10名を統括している。今までに本研究班から、いくつかの薬物依存関連遺伝子を見出してきた。それらの遺伝子を見つけるためには、依存動物を用い、脳内での発現変化や行動薬理学的な検討を1つ1つ行っていかなければならない。多くの依存関連遺伝子候補タンパクをスクリーニングするためには、時間、費用および人手が必要であり、現状では、不可能に近い。そこで、多くの種類の薬物依存関連遺伝子をスクリーニングする方法の確立を目的として、培養細胞を用いた薬物依存モデルの確立を試みることが、本萌芽研究の目標であった。そこで、わが国で、最も、乱用されているメタンフェタミンを対象として、モデル動物の確立を試みた。 メタンフェタミンの作用の1つに、細胞間隙でのドパミン遊離量の増大がある。ドパミン遊離量が増大することによって、さまざまな精神毒性が引き起こされていると考えられている。メタンフェタミン添加によってドパミン遊離の増大が観察される細胞系を確立することができれば、薬物依存関連遺伝子のスクリーニングに活用することが出来ると考えられる。そこで、本年度は、メタンフェタミン刺激でドパミン遊離が増大する細胞の確立を目指した。そこで、モデル細胞として、PC12細胞を用いた。この細胞は、ドパミン産生能を有し、ドパミン受容体やトランスポーターも発現している。この細胞にメタンフェタミンを作用させ、培養上清中のドパミン遊離量について、用量依存性や時間依存性を確認したところ、メタンフェタミンを作用させて12時間後に、ドパミンの遊離が観察された。来年度移以降は、このモデル細胞を用いて、我々が今までに、見出してきた薬物依存関連遺伝子について、検討したいと考えている。
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