メタンフェタミンは我が国において最も乱用されている依存性薬物である。しかし、メタンフェタミンが薬物依存を引き起こす機構については、ほとんど分かっていなかった。 メタンフェタミンが薬物依存を引き起こす作用機序として、細胞間隙でのドパミン遊離量が増大し、精神毒性が引き起こされることが報告されていることから、メタンフェタミン添加によってドパミン遊離の増大が観察される細胞系を確立することができれば、薬物依存関連遺伝子のスクリーニングに活用することが出来ると考えられる。 本研究課題が開始された平成16年度より培養細胞を用いて簡易に薬物依存関連遺伝子候補タンパクをスクリーニングできる薬物依存モデルの確立を目指し、17年度も継続して実験を行った。薬物依存が形成される原因に多くのことが考えられるが、上記したように、細胞間隙でのドパミン遊離量が増大を再現させるためには、ドパミンの遊離量を増加させるか、再取り込みを減少させるかのいずれかの方法がある。本年度は、特にドパミンの取り込みを減少させることによるモデル細胞の確立を試みた。神経様の形態を示し、神経初代培養細胞よりも遺伝子導が容易であるPC12細胞にドパミントランスポーター遺伝子を導入し、発現した細胞についてクローニングを行った。その結果恒常的にドパミントランスポーターを過剰に発現する細胞の確立に成功した。最終年度となる次年度は、この細胞にグリア細胞由来神経栄養因子を導入してメタンフェタミンへの作用を検討したいと考えている。
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