我々はddY系マウスから新たにインスリン抵抗性(IR)自然発症マウス(H系)とIRを発現しないマウス(L系)を系統分離した。H系マウスは、2型糖尿病の発症機構の解明およびその予防薬の開発に有用な病態モデルとして期待される。そこで、これらのマウスを用い、遺伝的にIRを発現する機構を明らかにすることを目的として研究を行った。ddY系およびL系を標準固形飼料で飼育すると、IRの発現は認められない。一方、H系では9週齢まではすべての検査項目において正常であったが、12〜15週齢からIRが発現し、6カ月齢では、約半数のマウスで、尿糖が検出され、糖尿病症状を呈した。そこで、これらの症状発現におけるアディポサイトカインの関与を検討する目的で、5週齢から20週齢まで一定週齢ごとに血中アディポサイトカイン等を測定した。H系では、IRが発現する前の7〜9週齢から摂食行動に関与するleptinが高値を、ghrelinが低値を呈した。また、resistinは5〜20週齢で変動が認められなかったが、IRを発現した12〜20週齢ではadeponectinが有意に低値となり、PAI-1、IGF-1は高値となった。脂肪組織におけるleptin、adeponectinのmRNA発現量は、それらのアディポサイトカインの血中レベルの変動と一致していた。これらの結果からアディポサイトカインの変動、特に早期に認められたleptinおよびghrelinが、IR発現の少なくとも一因になっていると推察される。一方、L系ではアディポサイトカイン類の変動は認められず、H系の対照動物として有用性が示された。これらのアディポサイトカインの変動は糖尿病患者でも観察される。アディポサイトカインの変動が一定週齢で発現する機構を解明することにより、2型糖尿病の発症予知、予防、その予防薬の開発へと発展することが期待できる。
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