GFPラットをドナーとして用い、その皮膚を移植することにより、ドナー由来の部分を判定することができた。上皮だけでなく、新たに上皮化した部分の下の結合組織成分(多くは肉芽組織)の一部もドナー由来であった。また、その部分の血管も細い血管はレシピエント由来だったが、やや太い血管はドナー由来だった。両者の間に交通があるかどうかは不明である。 気管の移植では、すみやかに上皮化が起こったが、上皮の移動の際に扁平上皮化生が起こり、細胞は重層化した。これは細胞の移動にとって何らかの有利な形質を獲得しているのかもしれない。免疫組織学的にはβ-catenin、E-cadherinなどが上皮の細胞膜領域に検出でき、epithelial-mesenchymal transitionが起こっているわけではないと考えられる。移動中の上皮にはγ-cateninが強く発現していた。また、種々の蛍光標識レクチンで染めたところ、一部のレクチンはドナー部分の上皮の線毛(LEL)や粘液分泌果粒(UEA-1、STL)を染めたが、移動を開始した上皮ではシグナルが著しく弱いか、全く見られず、上皮の性質に大きな変化が起こっていることが示唆されたこの移動中の気管の上皮から現在RNAを採取、subtractive cDNA cloningを行い、移動上皮に特異的な遺伝子のクローニングを目指して実験を行っている。 また、この気管の上皮ではdegenerative PCRにより、homeoboxを持った遺伝子や、Wntファミリーに属すると思われる遺伝子のシグナルが検出される。現在これらの遺伝子がこれらの遺伝子群の中のどれに当たるのかをクローニング、遺伝子配列により検討中である。
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