解剖学教室に保管されているCRL56 mmから335 mmの死産ヒト胎児の標本(正常)を対象に、光学写真の撮影およびμ-CTによる頭蓋の連続断層撮影を行った。 これらの連続断層像から、ポリウムレンダリング法により頭蓋骨全景の立体再構築像を得、さらには、1枚1枚の連続断層像から、蝶形骨を分離・抽出し、立体再構築像を得て、それぞれを時系列に配列した。 また、正常の頭蓋骨の立体的な形態形成の機構を知る上で、極めて有用であり、過去に形態学的な報告例のない非対称性重複奇形の自生体ならびに寄生体(胎齢32週)の頭蓋の連続断層撮影も行った。自生体の頭蓋骨は正常な構造であったが、無下顎、単鼻孔、合耳を呈する寄生体に於ては、後頭骨、筋骨の正中部付近、頭頂骨の一部が欠損しており、その結果、左右の側頭骨、耳小骨、鼓室輪が癒合し、これに伴いその他の頭蓋を形成する骨に回転や位置の変位が認められた。これは、軟骨原基の形成時に、後頭骨等の正中部付近が欠損したために、それを取り巻くその他の軟骨が回転、移動し、その後、骨化したためと類推された。 従って、頭蓋骨の形態形成は、粘性の高い液体(流体)および骨化(結晶成長)プロセスとして、解析可能であることが示唆された。また、種々の解析から、各骨の骨化中心は、骨密度の最大点と一致していると考えられた。 そこで、現在、成長端までの方向と長さ(ベクトル)を求める方法を検討中であり、その時間変化率、分離骨に於ける成長の規則性、隣接する骨同志の関連性などの追究から、形態を解析するための具体的な方法論を模索中である。
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