平成16年度では以下の2点について膜電位感受性蛍光色素[DiOC_5(3)]の光学的特性を明らかにした。 1.小胞体膜電位の変化方向とDiOC_5(3)の蛍光強度の増減の関係。 細胞質に対して小胞体内の電位が正負のどちらに変化した時に、DiOC_5(3)の蛍光強度が増加、あるいは減少するかを同定した。発生初期鶏胚の網膜神経上皮を実験対象として、DiOC_5(3)で小胞体膜と核膜を染色した後、以下の条件における蛍光強度の変化をリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡によって測定した。核膜がDiOC_5(3)によって染色されていることは、低浸透圧溶液により細胞体を膨化させ、蛍光像と透過光像を比較することにより確認した。 (1)小胞体膜電位が負方向に変化する条件として、アゴニストであるアデノシン3リン酸を投与しカルシウム放出を起こした。また、カルシウムポンプの阻害剤(thapsigargin)を投与しカルシウムストアを枯渇させた。この場合はリークチャネルを通ってカルシウムが流出する。両者の実験条件においてDiOC_5(3)の蛍光強度は増加した。 (2)小胞体膜電位が正方向に変化する条件としては、カルシウムストアが再充填されるフェースを検討した。この場合、小胞体膜と核膜に存在する起電性カルシウムポンプが作動し、膜電位は正方向に変化する。測定の結果、DiOC_5(3)の蛍光強度は減少した。 2.膜電位変化に対するDiOC_5(3)の蛍光強度変化の定量的関係。 鶏胚の後根神経節細胞から単離したパッチ膜をDiOC_5(3)で染色し、種々のレベルに膜電位固定した。電圧-蛍光強度関係から、1mVあたり1.3%の蛍光強度変化が生じることを明らかにした。
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