研究課題
これまで本研究代表者が長年に渡って一貫して解明してきたフィジオームの観点からの統合美的な丸ごと心臓ポンプ機能の中に秘められている諸要素統合のメカニズムとその背後にあるアルゴリズムを明らかにしようとするための新規な統合分析的方法論の開発を行った。自分がこれまでに行ったイヌ摘出交叉潅流心臓標本左心室を用いて蓄積されてきた左室圧容積、収縮性、酸素消費量などのデータを上記方法論の開発に役立つように解析しなおした。その今年度(2年目)の結果、(1)心房細動時の左室絶対性不整脈時の収縮性(Emax)変動に伴う総機械的エネルギー産生量を表す収縮期圧容積面積(PVA)およびこれらPVAとEmaxから計算でもって予測される不整脈毎の酸素消費量の推計値などの統計学的性質を世界で初めて明らかにした。(2)さらにこれらのEmaxやPVAを計算する際に必要となる左室死腔の不整脈依存性も検討し、その依存性はあってもわずかであり、不整脈時のEmaxやPVAの計算には殆ど影響を与えないことも世界で始めて証明した。(3)さらに、それらのEmaxやPVA等の指標でもっての心機能の評価は、不整脈時の拍動心内カルシウム及びクロスブリッジ動態のフィジオーム的解析を行う際に、不可欠の情報であり、今後さらに有効に利用されると考えられる。(4)同じくイヌ摘出交叉潅流心臓標本左心室で、これまでに確立してきた酸素消費から総機械的エネルギーへの交換効率の負荷独立性から、クロスブリッジの平均的動態を推定する方法を昨年開発したが、それらをさらに定量的に考察し、クロスブリッジがATPから機械的エネルギーを産生する効率は60%前後と高く、かつ負荷独立性を持つことになり、そのためには、ATP 1分子当たりのクロスブリッジの結合解離ステップ数は1回ではなく、等容積収縮でも数回、無負荷収縮では数10回、通常の拍出収縮では数回から数10回の範囲で負荷が小さいほど回転数が増す事が理論的に推定された。この結果を国際シンポジウムで講演し、H.HUXLEYらと討論したが、今後の更なる詳細な解析結果が期待される状況である。
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