研究概要 |
生体レベルでの体液浸透圧は水分の生体内への摂取と排出のバランスで調節され、視床下部にある浸透圧受容体が重要な役割を担っていると考えられているが、浸透圧受容体の実体は不明である。最近、浸透圧感受性を持つ非選択性陽イオンチャネルであるTRPV4が浸透圧受容体である可能性が示された。本研究では、野生型正常動物を用いて生理的条件下でのTRPV4の浸透圧受容体としての機能について検討している。昨年、生体への主たる水分摂取経路である飲水へのTRPV4の影響について調べ、TRPV4が体液浸透圧の生理的変動(1-2%)において飲水行動を調節し体液浸透圧維持調節に寄与していることを報告した(Am.J.Physiol.,in press)。今回、TRPV4の尿流出量への影響を検討した。その結果、1)通常飼育条件下でTRPV4のアゴニストである4α-phorbol 12,13-didecanoate(PDD)の側脳室内投与が尿流出量を増加させること、2)この作用がTRPV4のアンタゴニストであるruthenium red(RR)によって抑制されること、3)水負荷による利尿作用がRRによって減弱すること、3)通常飼育条件下でPDDはvasopressinとnatriuretic factorの遊離には影響しないこと、4)PDDの利尿作用がindomethacinによって抑制されること、5)prostaglandin E2が利尿作用を発現することを見出した。以上のことから、中枢のTRPV4は尿流出量調節を介して体液浸透圧の調節に寄与しているが、この調節機構にはvasopressinとnatriuretic factorは関与せず、プロスタグランディン系が介在している可能性があることが推測される(J.Pharmacol.Sci.100,Suppl.1,239P,2006)。
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