研究概要 |
視床下部に散在している性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンは、生殖内分泌系を調節する最終共通路であるが、支配する神経回路は皆目不明である。本研究では、トランスジェニックラットにおいて逆行性トレーサーをGnRHニューロンに特異的に発現させ、経シナプス的に支配ニューロンを可視化する。蛍光タンパク質(ECFP)と無毒化テタヌストキシンC末端(TTC)の融合タンパク質を逆行性トレーサーとして用いる。ECFP-TTC遺伝子をGnRHプロモーター領域の下流に挿入したトランスジーンを用い、トランスジェニックラットを作出して、GnRHニューロンに特異的にECFP-TTC融合タンパク質が発現せしめる。GnRHニューロンの活動に伴って細胞体周囲に分泌された融合タンパク質は、投射ニューロンの軸索末端から逆行性に取り込まれ、蛍光標識を行う。本研究により脳内に散在するGnRHを支配する神経回路と伝達物質、性ホルモンの作用部位を同定することにより、生殖内分泌調節の重要な課題となっている排卵の中枢調節機序や更年期の自律神経症状の病態の生理学的基盤を明らかにすることを期している。GnRH遺伝子のpromotor配列(3142bp)の下流にパスツール研究所Philippe Brulet教授(Miana-Mena et al., PNAS 99: 3234, 2002; Maskos et al., ibid. 99: 10120, 2002)から供与されたTTC遺伝子と蛍光タンパクEGFP遺伝子をっなげた導入遺伝子GnRH・P-IGFP-TTC(5962bp)を作成した。この遺伝子をGnRHの株細胞であるGT1-7細胞に導入して蛍光タンパクが合成されることを確認した。すでにトランスジーンをCrj:wistarラット受精卵に注入し、胚をレシピエントに注入したので、当初計画通り本年度内にトランスジェニックラットの産仔を得て、明年度の系統樹立と形態的・生理的実験に供する運びである。
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