下垂体後葉ホルモンであるバゾプレッシンおよびオキシトシンは、視床下部視索上核および室傍核に局在する神経分泌ニューロンの細胞体で産生され、下垂体後葉から血中に分泌される。我々は、ラットのバゾプレッシン産生ニューロンにオワンクラゲから分離された蛍光タンパクであるGFP遺伝子を発現させることに成功した。本トランスジェニックラットでは、バゾプレッシン産生ニューロンに特異的なGFPの緑色蛍光が蛍光顕微鏡によって観察できる。現在、順調に交配および繁殖中である。 本トランスジェニックラットでは、視床下部視索上核、室傍核、視交叉上核および下垂体後葉にGFPの強い緑色蛍光が観察される。現在、このGFP蛍光をin vivoの状態で経時的に観察することができるモニタリングシステムを開発中である。具体的には、(1)細く加工した光ファイバーを2本束ねて、本トランスジェニックラットの視床下部および下垂体後葉に埋め込こむ。(2)レーザー光を光ファイバーを経由してGFP発現ニューロンおよび下垂体後葉細胞に照射する。(3)レーザー光によって生じた蛍光を光ファーバーを経由して光電管に入れて電気信号に変換し、コンピュータ上でその蛍光の変化をモニターするというものである。 また、本年度はもう一つの下垂体後葉ホルモンであるオキシトシンを産生する神経分泌ニューロンに異なる蛍光色(赤色)タンパクをラットに発現させるために、DeRed-バゾプレッシン融合遺伝子の作成にとりかかった。
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