マウス皮下組織にsarcima-180あるいはNFSA腫瘍細胞株を接種するとゆっくりとした腫留の形成が認められる。これらの動物にACE阻害薬のリジノプリルあるいはAT1受容体格抗薬のTCV-116を投与すると、血管新生および腫瘍増殖は強く抑制された。腫瘍周囲ストローマを含む試料でAT受容体サブタイプの発現解析を行うと、AT2およびAT1bは全く検出されず、AT1aのみ検出された。免疫組織化学でAT1の組織内発現を調べると、AT1を発現しているのは腫瘍細胞ではなくむしろ腫瘍周囲めストローマであった。 致死量の放射線をWTのC57BL/6に照射し、WTあるいはATlaノックアウトマウスめ骨髄細胞を尾静脈より移植し、その後LLCを接種すると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、腫瘍増殖および血管新生の著しい抑制がみられた。AT1aノックアウトマウスには、欠損する遺伝子にLacZ遺伝子を導入しているので、β-galの免疫組織化学をおごなうと、確かにAT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、ストローマ部位で陽性像が認められた。さらに同部位でVEGFの発現を調べると、AT1aノックアウトマウスの骨髄細胞を移植したマウスで、減少していることが判明した。骨髄より間質に浸潤するストローマ細胞のAT1aを選択的にノックアウトすることで、がん依存性の血管新生、増殖が抑制され、遺伝子を改変した骨髄細胞移植が固形腫瘍の治療になりうることを示すことが出来た。
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