本研究は、新規のRINGフィンガー型ユビキチンリガーゼ(E3)をRINGフィンガーの塩基配列をもとにゲノムデータベースならびにPCRクローニングにより同定し、その基質ならびに機能を明らかにすることを目的とする。ユビキチン-プロテアソームシステムはプロテアソームにおいてポリユビキチン修飾された蛋白を分解するシステムで、蛋白発現調節・細胞周期進行・癌化・生体機能制御において重要な役割を果たしており、このシステムの破綻は内分泌疾患・癌・神経変性疾患などの病態をもたらすことが明らかにされつつある。ユビキチンを結合させるための酵素であるE3にはHECT型、RINGフィンガー型、U-box型の3つのタイプがある。我々は最近エストロゲン応答性のRINGフィンガー蛋白Efpが、細胞周期進行を抑制する14-3-3σを選択的に蛋白分解するE3であることを突き止め、本年度はEfpが乳癌の増悪因子であることを報告した。Efpの基質としての14-3-3σがホルモン療法不応性乳癌や、 前立腺癌、 卵巣癌、子宮内膜癌においてもその蛋白レベルが減少していることを明らかにした。また、RINGフィンガー蛋白遺伝子をベイトとした酵母2-ハイブリッド法を行い、結合する蛋白を複数同定し、それらを哺乳類細胞に発現させ、蛋白-蛋白相互作用を確認した。HIV抵抗性を担うことで注目されるTRIM5αについてはインターフェロンに応答してその発現が誘導されることを明らかにし、その調節の生理的ならびに病態での意義について考察を加え報告した。
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