【目的】小胞体は細胞内小器官であり、細胞内カルシウム濃度調節や蛋白質の修飾により細胞機能維持に重要な役割を果している。その障害が小胞体ストレスと呼ばれる現象であり、小胞体内に折り畳み異常を起こした蛋白質が蓄積する。小胞体ストレス応答にてこれらの蛋白質の蓄積を防いでいるが、その破綻が細胞死を引き起こす。研究代表者らは、小胞体ストレスによりカスペース-3、-7、-12が活性化されること、また小胞体に局在するBcl-xLがカスペース-7を特異的に抑制することを明らかにした。すなわち、小胞体においてBcl-xL依存性および非依存性のカスペース活性制御機構の存在を示した。さらに、神経疾患の病態を目指し、各種細胞死刺激によるカスペース-7の活性化を検討した。 【研究実績】 1.ハンチントン病:ポリグルタミン(polyQ)刺激による細胞死を検討した。HEK293細胞にpolyQを強制発現することにより、カスペース-7が活性化され、しかも小胞体に局在するBcl-xLにより特異的に抑制されること、さらに、この抑制はpolyQの量依存的であることを証明した。 2.脳虚血:小胞体に局在するBcl-xLの安定発現PC12細胞株を樹立し、glucose-oxygen deprivation法により細胞死を検討した。虚血刺激にては、カスペース-7の活性化及びBcl-xLの細胞死抑制に有意差を認めなかった。 3.パーキンソン病:α-synucleinタンパク質の発現では、疾患変異タンパク質を含め、カスペース-7の活性化を認めなかった。
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