研究概要 |
マウス脳内でのLRP, LRP1B, gp330/Megalinの分布と相対的な量を明らかにするために、我々が作成したマウスLRP1Bに対するウサギ抗血清を用いて、脳のWestern Blottingと免疫組織染色を行ったが、いずれの場合も明瞭なシグナルが得られなかった。そのため、この抗血清を、硫安沈殿し免疫グロブリン画分を精製する、あるいはプロテインAカラムによる精製を行った後に再度検討することとした。 LRP1Bによる、シグナル伝達機構を明らかにするために、LRP1Bの細胞内部分に結合する蛋白質の遺伝子を酵母Two Hybrid法によりスクリーニングした。この結果、JNKシグナル伝達因子群のスカフォールドとなるJIP-1bとJIP-2、PZDドメインを持ち膜蛋白質の局在にかかわるPICK1、低分子量G蛋白質のRanBP9、SH2ドメインをもちErbB2のシグナル伝達に関るGrb7が単離された。種々の欠失変異体やアミノ酸置換変異体の解析から、LRP1Bは、C-末端の疎水性アミノ酸を多く含む領域でPICK1のPZDドメインと結合し、また細胞内部分のNPXYモチーフでJIP-1bと結合することを明らかにした。これらの結合の仕方は、既に知られているPICK1やJIP-1bと他の蛋白質との結合様式と一致しており、LRP1Bとの結合が生理的な意味を持ちうる可能性を強く示唆している。今後は、JNK活性の測定や、LRP1B蛋白質の局在に及ぼすPICK1蛋白質の効果について培養細胞を用いた形質転換の系で解析する。 LRP1Bのヘテロ変異マウスを掛け合わせて、LRP1B欠損マウスを作成した。欠損マウスは正常に成長し、交配して子孫を残すことができた。今後は、脳内のアミロイドβペプチドの量を、正常と変異マウスの老化の進行を追いながらELISAにより解析する。
|