小胞体では新しく合成された分泌タンパク質や細胞膜タンパク質などの折りたたみや糖鎖の付加などが行われるが、これらのプロセスが妨げられると異常タンパク質が小胞体内に蓄積し、小胞体ストレスを引きおこし、転写因子CHOPを介してアポトーシスがおこる。糖尿病誘発剤ストレプトゾトシン(STZ)による糖尿病モデルにおいてChop破壊の影響を調べたところ、Chop破壊マウスにおいて正常の約20倍の巨大脾腫が生じ、CHOPが免疫システムに重要なはたらきをしていることを見付けた。この系を用いて免疫システムにおける小胞体ストレスおよびCHOPの役割を解析した。β細胞由来MIN6細胞をSTZで処理するとアポトーシスがおこった。この時DNA障害は見られず、CHOPやBipが誘導されることより、小胞体ストレスがおこっていることが示された。Chop欠損マウスおよび野生型マウスにSTZを投与しインスリン染色を行ったところ、野生型マウスではβ細胞の減少とアポトーシスが観察されたが、Chop欠損マウスではこれらの変化が著しく抑制された。脾腫における脾臓の変化をHE染色によって組織学的に検討すると共に、B細胞およびT細胞に特異的な抗体で免疫染色を行ったところ、主としてB細胞が著増していた。またSTZ投与後Chop欠損マウスではMHCクラスImRNA、クラスIImRNAが共により著しく誘導された。一方、LPSによるリンパ球の増殖はChopの破壊により変化しなかった。以上の結果、Chop欠損マウスではβ細胞のアポトーシスが抑制され、その結果、アポトーシスを免れたβ細胞から由来する抗原が強い抗原提示能を示し、B細胞が増殖すると共に、そのアポトーシスの抑制もあいまって、巨大脾臓を発生するのではないかと考えられる。
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