研究概要 |
抗原刺激T細胞が産生・遊離する好酸球特異的な遊走因子としてガレクチン9を同定し、その機能として好酸球遊走活性のほかに、活性化ヘルパーT細胞や腫瘍細胞にアポトーシス様の細胞死を誘導することを明らかにした。今回、萌芽研究として組織肥満細胞や組織に浸潤した好酸球に発現が見られることから、ガレクチン9が炎症局所においてユニークな好酸球活性化因子としての機能以外にガレクチン9を介して組織肥満細胞や好酸球の全く新しい生物作用、すなわちT細胞機能調節細胞としての機能を追求することから、萌芽研究で申請した。好酸球や組織肥満細胞をヒトから効率良くとることがきわめて困難であるため、局所において上記の細胞と同様にガレクチン9を発現しているマクロファージに対するガレクチン9の機能を検討することとした。血液単球をガレクチン9で刺激すると弱いながらもcostimulatory moleculesの発現を増強した。そこでLPSで単球を刺激しimmature樹状細胞(DC)に分化させた後にガレクチン9で刺激するとcostimulatory molecules発現増強とIL-12産生を誘導し、抗原刺激T細胞の増殖とともにIFNγ,IL-2,TNFα等のTh1サイトカイン産生を増強した。このDCに対する成熟誘導効果はラクトースで抑制されず、またβガラクトシド結合性を有さないミュータントガレクチン9でも効果が見られたことから、ガレクチン9はレクチンとしての機能の他にDC上のタンパク質と結合して生物作用を示すことが示唆された。また、ガレクチン9はMAP kinase p38やERK1/2のリン酸化を誘導すること、MAP kinase p38の特異的インヒビターでこの効果は抑制されるが、ERK1/2やPDI3 kinaseの特異的インヒビターでは抑制されなかった。これらのことから自然免疫機構のみならず、DC成熟を誘導しTh1免疫反応を誘導することにより獲得免疫にも重要な作用を示す物質であることが明らかにされた(J.Immunol.印刷中)。 今回の研究では直接的には肥満細胞や好酸球の炎症や生体防御反応における重要性は明らかに出来なかったが、炎症早期に肥満細胞からのガレクチン9の産生/遊離が見られるという予備的な実験結果からそれらの細胞から遊離されたガレクチン9がその後の免疫反応をDCをとおして調節することが考えられる。
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