免疫不全状態が癌発生に大きく関わっていることは周知の事実である。γヘルペスウイルスであるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)は特にAIDSにみられる免疫不全状態でカポジ肉腫やprimary effusion lymphomaなどの発生に強く関連しているとされるがその機構は不明な点が多い。ウイルス潜伏感染状態が癌発生にどのように関連するかを解析するためにKSHVを代表に動物モデルを構築中である。KSHVの潜伏感染ではウイルス因子LANA(latency associated nuclear antigen)はKSHV潜伏感染に必須の因子であるため、まず本年度の試みとしてLANA遺伝子発現トランスジェニックマウスを作製している。KSHVは生体内ではB細胞に潜伏感染していることからB細胞で発現するイムノグロブリンμ鎖遺伝子のエンハンサーによるトランスジェニック発現系を構築した。また将来的に生体内での発現細胞の確認、また生体から分離後の発現やその動態の解析に都合が良いようにEGFPをタグとして使用した。これまでにコンベンショナル飼育施設でいくつかのLANA遺伝子陽性親株系統を樹立した。今後同系マウスとのかけ合わせによりF1の樹立、F2でのhomozygoteの樹立に努めるとともに導入遺伝子gfpLANAの発現確認を行う予定である。また発現系統をSPF(specific pathogen free)化を予定している(本研究機関・部局の動物実験施設純系動物事業場へ依頼)。 そして今後gfpLANA発現系統に対しその形質を詳細に観察するとともにRag1ノックアウトなどの免疫不全状態を呈するマウスとの交配を予定している。
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