沖縄島では固有の生態系が存在している。近年の新興・再興感染症のほとんどが、人獣共通感染症であることから、野生動物のウイルスとの関係が注目されている。沖縄島ではコウモリがヒトの居住地でも頻繁に目撃され、ヒトとの距離は遠くない。沖縄に生息するコウモリは稀少動物に指定されているため捕獲には慎重を期している。今回、野生動物であり、居住地に近く数の多いマングースに関しても検討を加えた。 1.オオコウモリ 2004年12月に野外1匹の病死1日(推定)の体内の血液、脳、脾臓、肝臓を採取し、-70℃に保存した。 2.オオコウモリの糞尿採取はできなかった。 3.洞くつ性コウモリは5月から8月まで繁殖期を迎え、繁殖洞と呼ばれる数カ所のみで繁殖、子育てを行うことが、東洋蝙蝠研究所沖縄支部の生態調査からわかっている。 オキナワコキクガシラコウモリの繁殖洞2ケ所とリュウキュウユビナガコウモリの繁殖洞1ケ所が特定されており、いずれも沖縄島中南部に位置している。これら、3ケ所を含む計8ケ所の洞くつから約70プールの糞を採取し、-70℃に保存した。 4.洞くつ性コウモリの捕獲はできなかった。 5.オキナワコキクガシラコウモリの繁殖洞の洞口にCDC CO2トラップにて計4回、蚊の採集を試み、2匹のやぶ蚊を採取した。 6.琉球大学農学部が採取した、2001年から2004年にかけて捕獲されたマングース102頭から血清で日本脳炎ウイルス(JEV)の中和抗体を測定したところ24.5%が陽性であった。マングースがJEVに感染した報告は未だなく、新しい知見である。しかし、1頭以外は抗体価が100以下であったことから、血清型が近縁のフラビウイルスに感染した可能性も否定できない。また、定点マングース3頭から毎週採血し1頭で中和抗体価の変動が見られた。(この結果は、2004年の日本比較免疫学会、日本ウイルス学会、日米ウイルス部会で報告した。)
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