研究概要 |
沖縄島では固有の生態系が存在している。近年の新興・再興感染症のほとんどが、人獣共通感染症であることから、野生動物のウイルスとの関係が注目されている。沖縄島ではコウモリがヒトの居住地でも頻繁に目撃され、ヒトとの距離は遠くない。沖縄に生息するコウモリは稀少動物に指定されているため捕獲には慎重を期している。今回、野生動物であり、数と生息域を拡大し、沖縄島の生態系バランスを壊し、また居住地にも生息するマングースに関しても検討を行った。 1.オリイオオコウモリ2匹、オキナワコキクガシラコウモリ1匹の死骸(いずれも推定死後1日)体内の血液、脳、脾臓、肝臓からウイルス分離を試みたが、分離は出来なかった。 2.洞窟性コウモリの糞(オキナワコキクガシラコウモリ72プール、リュウキュウユビナガコウモリ20プール)からウイルス分離を試みたが、分離は出来なかった。 3.オキナワコキクガシラコウモリの繁殖洞の洞口で3回、CDCトラップでの蚊の採集を試みた。Culex pipiens2個体,Aedes albopictus2個体,Culex pallidothrax1個体が採集された。いずれも、吸血しておらず、個体数が少なかったため、ウイルス分離は試みなかった。 4.オリイオオコウモリ2匹の血液中に日本脳炎ウイルス(JEV)抗体を検出した。狂犬病ウイルス抗体は検出されなかった。 5.新たに2004年7月から2005年5月に捕獲されたマングース84検体血清中のJEV(4株使用)抗体、及び狂犬病ウイルス抗体を測定した。84検体中16検体(19.0%)がJEV4株いずれかに対する抗体を有した。狂犬病ウイルス抗体は検出されなかった。 以上より、沖縄島においてオオコウモリ、マングースはJEVに感染する事が判明した。しかしながら、ウイルスが分離されておらず、増幅動物としての役割は、今後の継続した調査に委ねられる。
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