研究概要 |
Interferon regulatory factor-3(IRF-3)は、ウイルスや細菌感染に対する宿主自然免疫応答の初期においてNF-kappaBとともにI型インターフェロン(IFN)産生に不可欠の細胞転写因子であり、その後の免疫反応の帰趨を左右するという点で精密な正負の制御機構が存在すると考えられている。近年その活性化をになう分子機構の解明が進んでいるが、一旦活性化されたIRF-3に対していかなる負の制御機構が存在するかについては、ほとんど報告がなされてない。本研究は、NF-kappaB活性化経路において脱ユビキチン化およびユビキチン化酵素として働くことが知られているA20がウイルス感染または2本鎖RNA投与によって誘導されるIRF-3の2量体化、転写活性化とIFNbeta産生を抑制していること、その抑制にはカルボキシル末端側のE3機能を有するZnフィンガードメインが必要であること、A20がIRF-3リン酸化酵素であるIKKiおよびTBK1と結合することなどを初めて明らかにした(Saitoh et al.,J.Immunol.2005)。IRF-3とNF-kappaBはともにI型IFN産生誘導に必要で、免疫反応において重要な役割を果たすがゆえに、その転写活性は多段階で精密なコントロールを受けている。正の制御機構の破綻は免疫不全症候群に、負の制御機構の破綻は自己免疫性疾患や敗血症ショック、悪性腫瘍などの病態に繋がることが報告されている。制御機構全体の分子レベルでの包括的理解が進めば、これらの病態解明と治療法開発に貢献することが期待される。
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