研究概要 |
自己免疫疾患患者では高頻度に抗核抗体(核内タンパク質抗体や抗DNA抗体)が検出される.しかし,自己免疫疾患患者で何故,高頻度に抗核抗体の産成が生じるかについての機序は明らかにされていない. そこで著者らは,抗核抗体陽性の自己免疫疾患患者血清を用いて,核の重要な機能を担い,複製・転写の足場である核マトリックスのDNA結合領域,すなわちMatrix Attachment Region DNA (MAR)を抗原として認識する自己抗体の高感度検出法を確立し,その特性を検証する事を目的とした. 昨年度は3種類のビオチン化MARプローブを作製し,高感度化学発光ELISA法により抗MAR抗体を測定したところ,従来法で測定される抗dsDNA抗体,抗ssDNA抗体とは異なる特性を示すという新たな知見を得た. 本年度は,これら高MAR抗体活性を示すヒト血清を用いて以下の研究を行った. (1)ガラススリップ上培養HeLa細胞核および調製核マトリックス(Nuclear Matrix ; NM)への抗体結合特性を蛍光標識免疫抗体を用いて検証する.培養HEK細胞についても(1)と同様の検証を行う. (2)HEK細胞からDNase Iおよび制限酵素を用いて,MAR(DNA)を精製・抽出し,その特性を検証する. 以上の実験結果から, (1)高MAR抗体活性を持つヒト血清で免疫染色されるintact HeLa細胞核染色像(従来法)に対して,マトリックス調製核に対するヒト血清の免疫染色像は全く異なり,核内微細構造特性を反映する興味ある染色像を示した.核内NMおよびNM領域を特異的に染色していることが推測される.HEK細胞についても同様の結果を得た. (2)培養HEK細胞から調製したMARの特性を検証した結果,MARの特性である300bpのMAR・DNAを分離・精製する事に成功した.
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