研究概要 |
【目的】 チップ電気泳動法と質量分析計を集積した生体内蛋白の超高速計量システムの開発、本システムの病態検査への応用の可能性を明らかにする。 【実施】 未変性条件で生体内蛋白を1分以内にサイズ分離するチップ電気泳動法の開発と1ピコグラム(タンパク質量としてフェムトモル以下)の超微量計量を行う検出システムの開発を行った。また、特異蛋白の高速分離のために超微量蛋白を固定化したチップの技術開発を行った。 【成果】 チップ電気泳動装置(島津MCE-2010、日立SV1210およびAgilent2100Bioanalyzer)のマイクロ流路に可溶性高分子デキストランを充填し、未変性条件で分子量基準蛋白標品(分子量6,000〜200,000)をサイズ分離したところ、日立SV1210を用いて12検体を6分で分離できた。また、蛍光試薬による蛋白計量を行ったところ蛋白ピークあたり1ピコグラムの検出感度を得た。これを基盤に、ヒトTリンパ腫細胞のアポトーシス誘導に伴い変化する細胞内蛋白の分離を試みたところ、1分以内にスタスミンとサイモシンβ-4のピーク変化を再現性よく検出できた(生物物理化学48巻第3号85-87頁、2004年)。現在、これらの成果を基盤に、血清蛋白の超微量計量を試みているが、アルブミンやトランスフェリン或いは免疫グロブリンなどの血清中に多量に含まれている蛋白の除去システムの改良が必要になっており、その条件を検討している。さらに、血清中の微量蛋白を特異的に計量するために、チップ流路に目的の蛋白に特異的に結合するリガンド(抗体など)を固定化する技術を開発している。 【今後の展開】 チップ電気泳動法による超高速蛋計量システムの基盤は確立したので、未知蛋白の同定と計量を目的としたチップ電気泳動法と質量分析計の集積システムを開発と、病態検査への応用の可能性を検討する。
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