研究課題
法医学において、頭部外傷やその他の重度の外傷で入院した後に死亡した例を解剖する際しばしば問題となるのが、死亡者が受傷時どの程度のアルコールやその他の薬物を摂取していたかである。受傷時の被害者の酩酊度や薬物による意識レベルの低下の程度がはっきりすれば、その障害を発生させた外傷の受傷機転や受傷時期、さらには自他為・過失の別、あるいは被害者の過失の度合いまでもがある程度明らかにできる。一方、頭蓋内血腫形成や、低酸素脳症による脳腫脹のための頭蓋内圧亢進により、あるいはその後脳死状態に陥ったことにより、血腫や脳への血流が途絶すれば、それ以後は血腫や脳内のアルコールや薬物濃度は比較的一定に保たれると考えられている。そこで本年度は、以下の実験を行った。1)ラットに経口的または経静脈的に一定量のアルコールや催眠剤、局所麻酔薬等の薬物を投与した。2)経時的に採血し、血中アルコール濃度、薬物濃度を測定し、代謝率を算出し、最高血中濃度に達する時間及び経時的な血中濃度の変化を観察した。3)ラットの頭蓋骨に小さな穴を開け、そこより自己の血液を硬膜外に注入する方法およびバルーンを膨らませる方法によって実験的に急性硬膜外血腫や脳死ラットモデルを作成することに成功した。4)注入部位や血腫量、空気の量による臨床経過の違いをポリグラフを用いて観察し、注入量や注入部位による変化を確認した。5)各経過のラットの血中、血腫中、脳内アルコール、薬物濃度を測定し臨床経過との関連を確認した。以上の実験により、法医解剖例への応用が可能であることが明らかとなった。
すべて 2004
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