研究概要 |
291人の日本人についてmtDNAのcontrol領域の全配列および系統特徴を示すcoding領域の変異を検索し、新たなG2b系統およびM11系統については全ゲノムの配列を決定した。特にそのうち211例については、前年度の結果にさらに詳細な検討を加え、ほぼ全ゲノムの情報に近いデータから日本人を105系統に分類した。またマレー人については血縁関係のないマレー人男性81人について、controlおよびcoding領域の情報からそれぞれの系統を決定し、東アジアに拡がるM7b2b,M7c1c,G2a1c,D4a,D4e1,N9a1,Y2,B4a,B4c1b1,B4c,B5a,F1a1が49.4%、南アジアに存在するE,R8,R*,R9b,M*,N*が48.1%(39例)を占めることを明らかにした。これらの結果と48例の中国人の全ゲノム配列の情報との比較から、日本人と中国人は多くの系統を共有するが、最も末端の系統においてそれぞれに特有な系統を形成していることを示唆する結果を得た。また、現状のHV1、HV2の情報から、日本人と中国人、韓国人、マレー人を一定の基準の元で識別可能か否か検討したところ、韓国人の約45-55%、中国人の約55-75%、マレー人の約90-95%は日本人と識別が可能と考えられた。またY染色体多型は、263人の日本人についてbiallelic markerと16種類のSTRの相関を検討し、これらの結果をcontrolとして、他の日本人集団、韓国人集団、台湾人集団についてSTR haplotypeからbinary haplogroupの系統を推測した。その結果、得られたY binary haplogroup頻度を比較すると、D2a系統は日本人に特徴的で、西日本を中心に北と南に向かい頻度が上昇し、O2b、O3系統は西日本を中心に北と南に向かい頻度が下降していた。これらの結果から、Y染色体多型を用いて、1人の対象者の地理的起源が日本か、または近縁集団であるのか推測できる場合が、かなりあり得ることが明らかとなった。
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