生活習慣病の主な要因の1つとして肥満がある。肥満は、脂肪細胞数の増加および脂肪前駆細胞の肥大化により形成される。したがって、脂肪細胞の異常な分化・増殖を抑制することは、生活習慣病の治療や予防に結びつく。我々はこれまでに、3T3-L1脂肪前駆細胞を用いたin vitro試験により、漢方薬の一種である黄連解毒湯およびその成分であるberberineが分化抑制作用を有すること、およびその作用機序が核内転写因子PPAR_Yの発現抑制であることを見出している。今回、糖尿病のモデルマウスであるKK-A^yマウスを用いたin vivo実験により、berberineの効果を検討した。 KK-A^yマウス(雄性、4週齢)を4群に分け、高脂肪食にberberineを0、0.1、0.5%添加して与えた。また、ポジティブコントロールとしてPPAR_Y antagonistであるbisphenol A diglycidyl ether(BADGE)を3%添加して与えた。体重及び摂餌量を3日おきに測定し、4週間後に採血し、血中グルコース値、トリグリセリド値、アディポネクチン値を測定した。また、精巣周囲・腎周囲・腸管膜の脂肪量を測定した。 その結果、berberine 0.5%添加群において、対照群と比較して著明な体重減少作用が認められた。また血中グルコース値、トリグリセリド値においても減少が見られた。これらの結果は、PPAR_Yを抑制することにより分化を抑制するBADGEの効果とほぼ一致するものであった。以上の結果より、berberineは、in vivoにおいて抗肥満作用を有することが明らかになった。
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