これまでの予備研究により、すべての癌細胞では、アルドラーゼAのみの発現が見られることが明らかになってきている。A型アイソザイムはB型に比して10倍以上の酵素効率があるため、癌細胞のような莫大な代謝を営んでいるところにはA型アルドラーゼが必要となると考えられている。ヒト肝臓はB型が優位であるが、胎生期はA型が優位になっている。今回の検討は、解糖系のアイソザイムをブロックすることにより、癌細胞にどのような影響を与えるかという壮大なテーマの第一歩と考えている。アルドラーゼAのブロックにより、(1)癌細胞のアポトーシスによる細胞増殖の著明な抑制(2)アイソザイムのB型への偏倚、それに基づく細胞増殖の抑制あるいは細胞分化の2通りが考えられる。 本年度の研究では、RNAi法によりアルドラーゼAをほぼ抑制できる実験系を確立することができた。Preliminaryに肝癌培養系で実験を開始したが、アルドラーゼAの抑制により肝癌細胞増殖を十分抑制できていないため、特異性や精度について検討を行っているところである。最近では、in vitroで90%前後の抑制に成功しているので、まもなくin vivo assayに応用できると考えられる。
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