研究概要 |
膵外分泌能力の低下は、膵導管からの重炭酸塩分泌の低下を生じる.このため、セクレチン負荷による膵液中の重炭酸塩濃度の低下をみる事が慢性膵炎診断に利用されてきた.しかし、このセクレチン負荷試験では分泌された膵液を十二指腸で吸収して測定するため、局所的な導管機能の低下や微小な変化を同定できなかった.すなわち、膵導管のわずかな異常部位を同定する事ができれば慢性膵炎の初期の段階を捉える可能性がある.同様に膵癌は末梢の導管から生ずるため、その発生初期の段階で局所的に導管機能の低下が起こっており、早期の状態ではその障害の為血清アミラーゼの上昇も認められる。この事から、膵管内の局所で膵液中の重炭酸塩濃度を測定できれば、膵癌の早期発見も現実的となる.ISFET (Ion Sensitive Field Effect Transistor)は、超小型の半導体で、幅約0.5mm以下と非常に小さく、シャーペンの芯ほどの大きさでpHを測定することができる。さらに微量な検体量で測定可能である点が特徴である.重炭酸塩は弱アルカリ性でありその濃度の変化はpHの変化を引き起こす.通常膵管径は1〜2mm程度であり、ISFETによる膵管内でのpH測定が充分に可能である.そこで、平成17年度にISFETを利用して、膵管内のpHをモニターし、慢性膵炎さらに膵癌の早期診断に対する応用を検討する事を目的とし,解析予定である.また,化学物質DMBA (9,10-dimethyl-1,2-benzanthraccene)膵癌誘発ラットモデル(Lab Invest 2003)を材料とし、膵管内pHを測定し、組織と対比し、膵癌発生早期の組織上における膵管内pH値の変化を解析すべくラットを作成予定である.
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