研究課題
サイクロスポリンAのHCV増殖抑制が、分子シャペロンであるサイクロフィリンの活性阻害によることを証明するために、特異的遺伝子発現抑制法であるsiRNAを用いてサイクロスポリンAの標的宿主遺伝子であるサイクロフィリン遺伝子発現の抑制を行いHCV増殖への影響を解析した。その結果、小胞体蛋白の分子シャペロンであるサイクロフィリンBのsiRNAによるノックダウンがHCV増殖を抑制することを確認し、Gastroenteologys誌に論文として発表した。種々のERストレスを惹起する薬剤、すなわち蛋白の糖鎖付加を阻害するツニカマイシン、小胞体内カルシウム濃度を低下させるタプシガルギンなどのHCV増殖に与える影響を解析し、ERストレスの中でも小胞体からのカルシウムの枯渇がHCV増殖を抑制することを見出した。また小胞体内に蓄積しERストレスを惹起すると考えらるHCV構造蛋白を発現し、これまでのHCV非構造蛋白のみを発現するHCVレプリコンよりも生体内のHCV増殖をより忠実に再現するHCV全長レプリコンとして、JFH株による培養細胞増殖系の導入を行った。今後、これによりERストレスとHCV増殖の関連を検討する予定である。ATF6はERストレスすなわち小胞体での異常蛋白の蓄積に反応して、小胞体より核に移行しERストレス反応遺伝子群の発現を誘導するERストレス制御の最も上流に位置する転写因子であり、実際にサイクロスポリンによりHCV増殖細胞内で発現が亢進することを見出した。今後、ATF6により誘導されるERストレス反応遺伝子群のなかの如何なる遺伝子がHCV増殖において本質的役割をになっているかを明らかとするため、DNAマイクロアレイを用いた網羅的解析により、HCV増殖下で活性化される遺伝子のなかで、ATF6反応性遺伝子を同定する予定である。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Gastroenterology 129
ページ: 1031-1041