平成17年度は主にラットの食道扁平上皮より樹立した初代扁平上皮培養細胞のcharacterizeを行うとともに、この細胞を腸型円柱上皮へと化生させる環境因子の検索を行った。食道扁平上皮がさらされる環境で特殊なものとしては、胃酸、胆汁酸、膵液への暴露がある。ラット食道扁平培養細胞を胃酸、膵液と接触させても円柱上皮の形質を出現させることができなかった。一方、胆汁酸と培養扁平上皮を接触させると扁平上皮に腸上皮への転写因子と考えられているCdx2の発現が更新した。Cdx2のプロモーターをクローニングしてdeletion実験を行うとCdx2プロモーターには2ヶ所のNF-κBサイトがあり胆汁酸との接触ではここを介してCdx2の発現が亢進していることが明らかとなった。次いで胆汁酸中のどの成分がCdx2のプロモーター活性を上昇させているか検討したところデヒドロコール酸とコール酸が他の胆汁酸と比較してはるかに強い作用を示すことが明らかとなった。次いでCdx2を食道扁平上皮培養細胞に強制発現させると腸型の粘液であるMuc2が扁平上皮に発現し腸型円柱上皮へと化生が進んでいくことが明らかとなった。そこで平成18年度はCdx2プロモーター活性の上昇を指標として線維芽細胞の発現ライブラリーを組み込んだCOS細胞の培養上清の扁平上皮への作用の検討をしていく予定である。
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