肺高血圧症では肺動脈のリモデリングが特徴的であり、治療のターゲットとして重要であることは以前から指摘されていた。我々は慢性的低酸素肺高血圧発症マウスにおける肺動脈のリモデリングにおいても、骨髄由来の前駆細胞がその形成に関与していることを確認した(Satoh K Circulation 2003 supplement IV-492)。以上の基礎実験をもとに、循環する骨髄由来の前駆細胞へ遺伝子導入を行うことでマウスの肺高血圧を抑制できないがを確認するのが本研究の目的である。 平成16年度の研究はほぼ予定通り進行している。これまで行った内容を列挙する。 (1)マウス骨髄からのFlk-1陽性細胞の採取を高速細胞分離器(FACSAria)で行い、目的とする細胞を採取できることが可能となった。 (2)導入遺伝子のデザインを行い作成中である。採取されたFlk-1陽性細胞に導入用キットを用いて遺伝子導入を行っている。 (3)分離細胞への遺伝子導入効率を安定化させるために、時間がかかっている。 (4)遺伝子導入したFlk-1陽性細胞をマウスの尾静脈へ静脈注射で移植する実験を始めている。 (5)さらに、細胞移植したマウスを低酸素チャンバー(O_2=10%)にて3飼育し肺高血圧を評価する予定である。 (6)蛍光免疫染色やX-gal染色によって、移植された細胞の組織修復部位への遊走および血管内皮および平滑筋細胞への分化を確認している。 これまでの研究結果の一部を2004年11月のAHA(アメリカ心臓学会)で発表したほか、2005年3月の日本循環器学会(5演題)で発表した。
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