本研究では、血管疾患の新しい血液診断マーカーの探索研究のシーズとして、血管傷害の血液診断マーカーを探索し、アッセイ系を開発し、臨床応用への基盤となる研究を行うことが目的である。そのために、血管傷害時に血管壁から血中に放出される蛋白質を単離・同定し、さらにその知見をもとに診断アッセイを開発するための研究基盤ならびに技術を構築する。 質量分析器で血中蛋白質を単離同定する。単に血液サンプルを質量分析器で包括的に解析するのではなく、differential proteomics法という二つのサンプルを分画しながら差を検討する方法を用いる。 上記検討を実施した。検討には、SELDI TOF-MS器を用いた。SELDI TOF-MS器は、血清を種々の表面加工された測定用マトリックス(プロテイン・チップ)にアプライし、分画することが可能である。陽イオン、陰イオン等、クロマト担体様に加工されたプレートにサンプルをアプライし、また吸着、洗浄方法を複数設定することで256通り以上の条件について検討した。今回は、血管傷害のモデルを用いたが、血管傷害時に出現するピーク、減少するピークを複数同定することに成功した。しかしながら、これらのピークは個人間の多様性の程度と比し、判別困難な面があった。現在、条件設定を含めて、ヒトサンプルを用いた際の多様性の問題を克服するために、種々の検討を行っている。 このように、血管傷害をはじめ、病態の新しいマーカーをプロテオミクス手法を用いて探索するためのアプローチを開発中である。本年度は初期のパイロット検討を通して一定の成果をあげることに成功したが、問題点も明らかになった。
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