研究課題
siRNA(Small interfering RNA)は塩基配列特異的に目的遺伝子の発現を抑制する短い二重鎖RNAである。siRNAは従来より用いられているアンチセンスオリゴDNAやリボザイムに比較して、その遺伝子発現抑制効果において明らかに優っている。RNAiは線虫での遺伝子ノックダウン法としては既に標準的な手法となっている。しかし、哺乳類細胞へのsiRNAの応用は2001年に初めての報告がなされたばかりであり、siRNAの動物へのin vivo応用はまだ端緒についたばかりである。特に臨床応用に関しては研究が始まったばかりであり、そのターゲットも主にウイルス疾患と悪性腫瘍に限られている。我々はこれまでに動脈硬化、冠動脈インターベンション後再狭窄、心肥大・線維化、血管新生に重要な転写因子KLF5を同定し、その機能をノックアウトマウスなどを用いて解析してきた。本研究計画ではKLF5に対するsiRNAを中心として、慢性炎症を基盤とした疾患に対するsiRNAの臨床応用法を開発する。まずKLF5発現を効果的に阻害できるsiRNAを同定した。このsiRNAによって平滑筋細胞の形質変換、線維芽細胞の活性化、内皮細胞の遊走が抑制できることを培養細胞で確認した。また、in vivo導入の最初の段階として、マトリゲルプラグアッセイによってこのsiRNAが内皮細胞浸潤と血管新生を抑制することを確認した。さらに、in vivoでの治療ターゲットを拡大するために、ナノ粒子を用いた投与法を検討し、全身投与で血管透過性亢進部位への集積を得ることができた。この手法を用いることによって、マウス皮下に植えた悪性腫瘍における血管新生を阻害し、腫瘍増殖を抑制できた。この方法は、今後のsiRNA臨床応用のための基盤技術として重要である。
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
ページ: doi 10.1161/01
Circulation Research 97・11
ページ: 1132-1141
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