研究課題
本研究の基本となる"膜移送欠陥細胞モデル"として、HEK293細胞にHERGチャネルを発現させ、c-Src tyrosine kinaseによるチャネル活性の修飾を詳細に検討した。active c-Srcの共発現は135KDaの未熟なHERG蛋白の発現増加をもたらし、この効果はherbimicynAやPP2などのPTK-inhibitorで抑制された。全細胞電流記録ではc-Srcは電位依存性活性化の脱分極方向へのシフトや活性化の遅延などkineticsを変化させたが、これのみで最大電流値の低下(51 pA/pFから8pA/pF)を説明できなかった。これらの結果は-Srcによる膜移送欠陥チャネルがcore-glycosilated proteinとして心筋小胞体に保持されたままになっていることを示し、これまでに明らかにされた膜移送欠陥を呈する複数のHERG変異(C端ではR752W, V822Mなど)と機序を共有することが明らかとなった。HERGチャネルの膜輸送欠陥がチャネル遮断剤によって改善される例が報告されている。HERG遮断剤の研究の一つとして、cibehzolineの電気生理学的遮断特性を明らかにした。Cibenzolineは膜電位依存性活性化・不活性化曲線をともにマイナス側にシフトさせ、チャネルの開状態に親和性を示した。イオンチャネルの機能異常が不整脈発現と関連する他の先天性心疾患の研究も続けている。本研究と直接に関係する臨床例として、細胞膜移送欠陥を呈するHCN4チャネル(ペースメーカー電流)や、KCNQ1チャネル(IKs電流)の変異例を発見した。前者の症例では洞不全症候群でありながらQT延長と多型心室性瀕拍による失神発作があり、HCN4にD553N変異が認められた。Cos細胞を用いて本変異の機能解析を行うと、膜移送欠陥による電流低下が認められた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Heart Vessels 19
ページ: 137-143
J.Biol.Chem. 279
ページ: 27194-27198