【目的】我々はこれまで、マウスES細胞を用いて心血管分化研究を行ってきた。本研究は、ヒトES細胞においても系統的に心血管細胞が分化誘導できる新しいヒトES細胞分化誘導系を構築し、ノックアウト動物による検討が不可能なヒトにおいても心血管分化研究のできる新しい分化・再生における研究基盤を創出することを目的とする。すなわち、1)ヒトES細胞維持培養系の確立、2)ヒトES細胞の中胚葉細胞(Flk1陽性細胞)への分化誘導、3)ヒト中胚葉細胞からの心血管細胞の分化誘導・純化、4)ヒト心血管細胞前駆細胞の同定、5)誘導ヒト心血管細胞の移植実験、6)心血管細胞分化における遺伝子プロファイル作り。以上の項目の検討を行い新しいヒトES細胞分化研究システムを構築する。 【結果】マウスES細胞分化系を用いて、ES細胞由来Flk1陽性血管前駆細胞から、ephrinB2陽性動脈内皮細胞とephrinB2陰性静脈内皮細胞を誘導することに成功した。また、Flk1陽性細胞からprox-1陽性リンパ管内皮の誘導および純化にも成功した。ES細胞由来Flk1陽性細胞から単一細胞レベルで心筋を分化誘導することが可能な新しい心筋分化誘導システムを構築し、高い心筋分化能を有する心筋前駆細胞の同定に成功した。ヒトES細胞に関しては、京都大学臨床病態医科学との共同研究により、ヒトES細胞血管分化システムを構築している。加えてヒトES細胞使用計画「ヒトES細胞を用いた心血管細胞分化機構に関する研究」(研究代表者:山下 潤)が文部科学省審査会において承認され(平成17年1月31日)、ヒトES細胞を用いた研究の開始が可能となった。 【結語】マウスES細胞における新しい包括的心血管分化解析システムの構築に成功するとともに、同システムを用いたヒトの心血管発生研究が可能となった。
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