本研究では、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いてES細胞由来心筋分化細胞に特異的に発現する表面膜分子の同定と、それを用いた心筋分化細胞の単離法の開発を目的として、遺伝子工学的、あるいは蛋白工学的手法を用いて検討を行ってきた。心筋特異的プロモーターにより緑色蛍光蛋白(EGFP)発現が制御される遺伝子を導入したES細胞を用い、FACSにてEGFP発現心筋細胞を単離し、検討を行っている。マウスES細胞においても、その心筋分化効率は数%と低く、FACSによる単離を経て解析に充分な量のPoly(A)+RNAや膜タンパクといったサンプルを調整することは困難であったが、培養条件、ソート条件の最適化などをまず行い、10^6個以上のEGFP陽性心筋細胞を95%以上の純度で単離する方法を確立した。ここで得られた細胞よりTriton X-114を用いた難溶性タンパクの相分離による回収、タンパク吸着レジンによる脱塩/バッファー交換後、可溶能の高いサンプルバッファーにて溶出し、膜タンパク分画を得、2次元電気泳動を行い、EGFP陰性細胞より得たサンプルとの比較により、心筋分化細胞に特異的に発現する数個のスポツトを同定し、現在、マススペクトロメトリーにて解析中である。またランダムな7アミノ酸よりなるペプチドライブラリーを発現するファージライブラリーを用いて、EGFP陰性非心筋細胞群に対して陰性選択後、EGFP陽性心筋細胞群に対して2回の陽性選択バイオパニングを行い、4種の心筋分化細胞に特異的に結合するアミノ酸配列を同定した。現在、このペプチドを固相化して心筋分化細胞を単離する方法の開発と、これらペプチドに結合する心筋分化細胞表面分子の同定を進めている。
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