【背景】 難治性慢性心不全に対して、骨髄幹細胞を用いた細胞移植医療が研究されており、循環器領域においても、急性心筋梗塞例、閉塞性動脈硬化症例などに臨床応用されている。しかし、現在のところ、細胞移植の材料として、骨髄から抽出した単核球を移植細胞として用いており、雑多な細胞群を用いているため、分化の方向が様々な方向に進む可能性があり、副作用の出現が懸念される。心筋細胞においても、刺激電動系の心筋細胞と作業心筋の2種類が存在し、心室内に移植した細胞が刺激電動系細胞に分化してしまうと、致死的不整脈の出現をきたすという重大な問題がある。そこで、本研究の目的は、分化の方向を単一な細胞に分化する条件を検討することである。 【結果・考察】 我々は既に、試験管内においてヒト骨髄間質細胞に脱メチル化剤を投与しさらにマウス心筋と共培養することでヒト骨髄間質細胞から心筋細胞に分化させることに既に成功している。これらの方法をもとにして、分化心筋細胞の内、刺激電動系細胞、作業心筋などをそれぞれ単離できる条件を検討した。分化誘導に使用した脱メチル化剤である5-azacytidineの濃度を今までは3μMであったのを10μMにしたこと、共培養を行うマウス心筋の細胞数を培養皿あたり5x105であったのを2x106にしたことで当初、0.3%程度であった心筋細胞への分化効率が1〜2%に増加した。また、その細胞は胎児型の活動電位を有し、さらにRT-PCRにてIK1チャンネルを発現していることからペースメーカ細胞に分化していることが確認された。現在のところペースメーカ細胞の分化効率の増加に成功したので、次の段階として、分化誘導した骨髄間葉系幹細胞を刺激電動系心筋を単一な細胞群として抽出することが次の目標である。
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