研究概要 |
昨年度に引き続き、血管壁の肥厚や攣縮の抑制に有効である可能性について検討した。 320から460gのウィスターラットをペントバルビタール1-2mg静脈投与で麻酔し、大腿から外腸骨動静脈を露出した。そして、中性子補足療法による,血管反応性と血管壁肥厚抑制の検討を行った。血管攣縮予防の研究:大腿静脈より低濃度のGdDTPAを持続的に血管内投与しながら、右側の総腸骨動脈に外部より中性子線を照射する。照射後に総腸骨動脈を露出しノルアドレナリン総量10μgを直接外膜側に塗布した。収縮度は高倍率のCCDビデオカメラで血管を撮影し血管収縮度を評価した(n=14)。対照は無治療群で同様の処置を行い比較した(n=10)。また、照射1か月後のラットでも同様の実験を行った。直後の評価では両群ともに機械的刺激によりすでに血管が収縮しており、GdNCTによる収縮抑制効果は認められなかった。1月後、GdNCTの8匹(63%)と対照の9匹(89%)で、同様に血管収縮度を評価した。軽度の血管収縮度(径で70%以下)がGdNCT群の5匹と対照の8匹で認められたが、有意差はみられなかった。また、別の群では、引き続き血管壁肥厚抑制の研究を行った。16匹のラットを麻酔後に大腿動静脈を露出した。右総腸骨動脈と大動脈をガイドワイヤーで傷害し、中性子照射療法を行った。照射1月後に血管を摘出し、内膜の肥厚度を組織病理学的に評価し、血管障害のみの対照群と比較した。GdNCT10匹と対照群9匹で1月後の血管内肥厚度の評価が行えた。内膜/中膜比(I/M%)は対照群では70±29.6%、GdNCT群では13.1±8.5%であった。また、免疫組織染色で、増殖因子などの動態を検討したが、VEFGとbFGGの発現が対照血管の増殖部で認められたが、GdNCT群ではほとんど発現が見られなかった。CD68およびアクチン染色により増殖部の細胞は血管平滑筋が主であり、マクロファージはほとんど認められなかった。また、MMP-2,9、CD62P,CD63の発現はいずれにも認められなかった。 以上より、GdNCTにより血管内膜増殖肥厚や血管攣縮が予防できる可能性が示唆された。
|