研究課題/領域番号 |
16659209
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中島 康秀 産業医科大学, 医学部, 教授 (20038780)
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研究分担者 |
筒井 正人 産業医科大学, 医学部, 助教授 (70309962)
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キーワード | Asymmetric dimethylarginine / 血管 / 動脈硬化 / 一酸化窒素 / 一酸化窒素合成酵素 / マウス / アンジオテンシン / 酸化ストレス |
研究概要 |
【目的】一酸化窒素(NO)は、L-アルギニンからNO合成酵素(NOS)を触媒として生成され、血管の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。L-アルギニンアナログは、L-アルギニンと競合して一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性を阻害すると考えられている。しかし、我々は、合成L-アルギニンアナログであるL-NAMEによる血管病変形成が、実はNOS活性阻害を介さない機序で惹起されるという意外な事実を見出した。本研究では、内因性L-アルギニンアナログであり重要な生体内NOS阻害物質とみなされているAsymmetric dimethylarginine (ADMA)による血管病変形成にも、NOS阻害を介さない機序が関与するのか否かを検討した。 【方法】野生型マウス及び内皮型NOS (eNOS)欠損マウスを実験に使用した。ADMAを浸透圧ミニポンプを用いて4週間皮下投与し、冠動脈病変形成をMasson染色により評価した。生体内NO産生はGriess法による血漿中及び尿中NOx濃度の測定により、冠動脈NO産生は電極法により評価した。 【結果】ADMAの長期投与は、野生型マウスの微小冠動脈に中膜肥厚と外膜線維化を引き起こした。重要なことに、ADMAの長期投与は、eNOS欠損マウスの微小冠動脈にも同程度の中膜肥厚と外膜線維化を引き起こした。これらの血管作用はL-アルギニンの同時投与によって抑制されず、また生体内及び冠動脈のNO産生はADMAの長期投与によって阻害されなかったことから、NO非依存性の機序が示唆された。 【結論】ADMAがeNOS非依存性に血管病変を惹起することを初めて明らかにした。今後は、ADMAの長期血管作用が完全にNO非依存性なのか否かを、NOS完全欠損マウスを用いて解析する。また、如何なる機序が関与しているのかを、組織レニン・アンジオテンシン系の活性化や酸化ストレスに着目して検討する。
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