研究概要 |
狭窄性細気管支炎(constrictive bronchiolitis obliterans)は膠原病やウイルス性感染症などに伴うもの難治性疾患として従来より知られ、近年では骨髄移植や肺移植後に発症する最も治療が困難な合併症として認知されている。最近ではアマメシバなどの健康食品の摂取後に発症し、その多くの患者が死に至ったことから社会問題としても取り上げられた。臨床上経験されるこれらの患者の診断は外科的肺生検なくしては困難で、また生検肺の中にも病変部が検出できないこともあり、その発症病態の理解が求められている。本研究を進めるにあたり、臨床的に経験された様々な原因から発症した狭窄性細気管支炎患者の生検肺を詳細に観察し、病理学的考察を加えて報告した。さらに、マウスに対して骨髄移植を行い、それによって細気管支周囲のリンパ球の集積を伴う炎症が、極めて臨床的に経験される狭窄性細気管支炎の病態と類似していることを確認した。GFP陽性マウスの大腿部の骨髄を、放射照射によって骨髄抑制を起こしたマウスに移植すると、その狭窄性細気管支炎病変部に集積するリンパ球が、新たに移植した骨髄由来細胞であることが示された。この骨髄移植マウスの気道にブレオマイシンを投与して気道-肺傷害を引き起こすと、気道上皮細胞と気道周囲の肺胞上皮細胞にアポトーシスが誘導され、さらに引き続いて肺の線維化が進むことを確認した。このようなブレオマイシン肺傷害のある、あるいは単に骨髄移植のみを行なったマウスに、肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor,以下HGF)を遺伝子導入すると、産生されたHGFによって気道内の炎症や、その周囲の肺組織の炎症像は著明に抑制された。この結果は、狭窄性細気管支炎に対するHGF遺伝子導入の治癒的効果と、その臨床応用への可能性を示している。
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