腎臓の再生医療に向けて、発生機序を解明することが必要である。近年、神経栄養因子GDNFによるRetチロシンキナーゼの活性化は胎生期における腎臓発生に必須であることが明らかにされている。発生初期にRetを発現した尿管芽は、間葉から分泌されるGDNFによって分化誘導をうけ分岐および形態発生に至ることが明らかにされている。しかしながら、Retシグナル伝達系において、尿管芽分岐に必要な細胞運動や細胞極性決定の機構は解明されていない。私達はRetシグナル伝達系で活性化されるAkt(セリン/スレオニンキナーゼ)に着目し、yeast two hybrid法により、Aktの新規基質を同定した。我々は新規Akt基質の生理機能について生化学的、細胞生物学的に解析し、初期尿管芽等のRet発現細胞の運動能獲得、分岐、形態形成におけるAktシグナル伝達系の役割について解明を試みた。 MDCK細胞の抽出液を用いて免疫沈降法によりABP1のAktとの結合能を確認している。またABP1とAktの組み換えタンパクを大腸菌あるいはバキュロウイルスの発現系を用いて精製し、in vitro binding assayを行い両者の直接の結合と、そのkineticsを検討している。 ABP1およびABP1に存在するAktによるリン酸化部位のセリン残基をアラニンに置換した変異体をin vitro translationにて作製し、Aktのdominant activeあるいはAktのdominant negative変異体を発現させた細胞抽出物とincubateし、リン酸化反応を行い、これによりABP1のリン酸化部位を検討している。
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